名前も思い出せない記憶を追いかけてVJアプリを作った。あれはMilkDropだった。
記憶
友達の部屋だった。深夜。音楽が鳴ってた。
パソコンの画面で何かが動いてた。色が変わって、形が変わって、音に合わせて呼吸してた。
何時間も見てた。あれが何だったか、名前なんか覚えてない。ただ見てた。
忘れた
大人になった。仕事した。あの画面のことは忘れてた。
でも体のどこかが覚えてた。
作った
VJアプリを作った。なんでかはよくわからない。
p5.js でビジュアルを書いた。286 個。音に反応するやつ。3D のやつ。幾何学模様のやつ。パーティクルが飛ぶやつ。全部自分で書いた。
ビデオスクラッチも作った。実際のミュージックビデオを指でスクラッチできる。前にも後ろにも。DJ がレコードを触るみたいに。これは最初から作りたかった。
レイヤー、ブレンド、フィルター。全部作った。ブラウザで動く。タッチで操作する。完成した。
MilkDrop
知り合いに見せた。「MilkDrop って知ってる?」って言われた。
知らなかった。見せてもらった。きれいだった。Butterchurn っていうので、ブラウザでも動くらしい。
入れてみた。395 プリセット。全部音に反応する。「へー、いいじゃん」と思った。
それだけ。この時はそれだけだった。
繋がった
最近のことだ。
誰かが「Winamp」って言った。あのメディアプレーヤー。昔使ってた。あの変な黄色いやつ。
MilkDrop は Winamp のプラグインだったらしい。
待ってくれ。
Winamp は使ってた。あの画面も見てた。深夜に友達の部屋で見てたあれ。あれが MilkDrop だった。
俺はもう自分のアプリに入れてた。自分が昔見てたものを、名前も知らないまま、もう組み込んでた。
なんだそれ。
Winamp の話
- 1997 生まれた
- 1999 AOL に 8000 万ドルで買われた
- 2013 殺された
- 2014 ベルギーの会社に買われた
- 2024 ソースコードが公開された。1 ヶ月で消された
会社は自分が持ってるものの価値がわかってなかった。
でも MilkDrop は死ななかった
コミュニティが生かした。
- MilkDrop 3.0 — コミュニティが作った。Winamp なしで動く。
- projectM — オープンソースで作り直された。
- Butterchurn — ブラウザで MilkDrop を動かすやつ。MIT ライセンス。
Butterchurn がなかったら、俺のアプリに入ってなかった。俺の記憶と繋がることもなかった。
VJam
自分で書いたビジュアル。MilkDrop。全部音に反応する。全部ブラウザで動く。全部タッチで操作する。
ビデオスクラッチ。レイヤー。ブレンド。フィルター。プロジェクター出力。
MilkDrop は見るものだった。VJam は演奏するものだ。
最後に
深夜 2 時に酔っ払って見つめてたあれ。名前も知らなかったあれ。もう自分のアプリの中にあった。気づいてなかっただけだった。