他人のプラットフォームに依存しないとはどういうことか — 2026年5月第2週のテックニュースを通して
🌐 なぜ今週の話を書くのか
2026年5月の第2週は、**「他人のプラットフォーム(=GoogleとかAppleみたいな大手サービス)に頼り切るとどうなるか」**を改めて考えさせられる1週間でした。
- 🤖 Googleが、あなたのパソコンに勝手に4GBのAIを入れた(Chromeブラウザ経由)
- 🚫 Google脱却派のスマホが「お前ロボットだろ」と弾かれるようになった(reCAPTCHAの更新)
- ✂️ Cloudflare(クラウド最大手)が従業員20%をリストラ
- 🤡 AIが書いたコピペがオンラインコミュニティを破壊している
ニュースを並べるだけで、**「巨大サービスに乗ったままだとこうなる」**という図が見えてきます。
そして同じ週に、私は自前のメールマガジン配信システムを1日で作りました。これはたぶん偶然ではなくて、世のニュースを浴びていると、自然と「自分で持つ」方向に手が動くんですよね。
今週見たニュースを整理しつつ、最後に自前メルマガの話で締めます📮
🔍 Google Chromeが、あなたのパソコンに4GBのAIを勝手に入れた件
📰 Google Chrome silently installs a 4 GB AI model on your device without consent(HN 1737pts)
プライバシー法の専門家、Alexander Hanff氏が告発した記事です。
何が問題なのか: GoogleのChromeブラウザが、Gemini Nano(=Googleが作った小型のAIモデル、ChatGPTの弟分みたいなもの)の4GB分のデータを、ユーザーに何も聞かずに、勝手にダウンロードしているんです。
しかも:
- ❌ 「入れますか?」というダイアログは出ない
- ❌ 「入れない設定」は普通の人にはできない(企業向け管理ツールでしか拒否できない)
- ❌ 削除しても、また勝手に再ダウンロードされる
ChromeをインストールしただけのつもりがGemini Nanoまで抱き合わせで入る、という構造です🎁
📦 4GBってどれくらい?
- 普通の写真 1000枚分
- 映画 1〜2本分
これがあなたのSSDから勝手に持っていかれます。
🌍 環境負荷も無視できない
Hanff氏は気候コストにまで踏み込んでいます。
Chromeのインストール台数を考えると、4GB × 何十億台分のダウンロードが、世界中で勝手に走る計算
サーバーの電力、海底ケーブルを流れるデータ量、ユーザーのSSDの寿命—全部があなたの同意なしに消費されています🔌
💡 ここから何が学べるか
「Chromeを使う」と決めただけで、「Gemini Nanoを動かす」と決めた覚えはない。なのに、Googleは勝手に追加機能を抱き合わせてきます。
ブラウザというWebの基盤が、もう中立じゃなくなっている、という証拠ですね🏗
🚪 Google脱却派のスマホが「ロボット扱い」される件
📰 Google broke reCAPTCHA for de-googled Android users(HN 1460pts)
📰 Google Cloud Fraud Defence is just WEI repackaged(HN 692pts)
これは2件束ねて読むと意味がわかるニュース。
🔐 まず reCAPTCHA って何?
ウェブサイトで「私はロボットではありません」のチェックボックスを押す、信号機の画像を選ぶアレ📦。あなたが人間かbot(=自動プログラム)かを判定するGoogle製のサービスです。
🚫 何が起きたか
GoogleがreCAPTCHAに更新を入れて、Google製アプリ「Play Services」のバージョン25.41.30以上が入っていないスマホは通れないようにしました。
具体的には、怪しいと判定されると画像パズルではなくQRコードスキャンに切り替わります。それを通すには、Play Servicesがバックグラウンドで常駐し、Googleサーバーと通信していることが必須。
ところが、GrapheneOS(=Googleアプリを全部抜いたAndroid OS、プライバシー重視のユーザーに人気)を使っている人たちは、そもそもPlay Servicesを入れていない。だからreCAPTCHAを通れなくなり、ウェブの基本機能が使えなくなったわけです😡
🍎 iPhoneは無事
面白いのが、iPhoneは追加アプリ不要で通ること。
Apple端末は人間扱い、Google脱却派のAndroidは人間扱いされない
露骨にGoogle製品を使わないと不利な仕組みになっています。
🎭 これは2023年に葬ったWEIの復活劇
Private CaptchaのTaras Kushnir氏が、この仕組みは2023年にGoogleが諦めた「Web Environment Integrity (WEI)」(=ブラウザの正当性をハードウェアで証明する仕組み)の再パッケージだと告発しました。
Googleは2023年、標準化団体の反対でWEIを葬った。今、3年後、同じ仕組みが「reCAPTCHAの進化版」として商品化されて再登場した。
WEIが反対されたのは、「正規のブラウザ・ハードウェアでないとWebが使えない」というオープンWebの終焉を意味するから。それが**「セキュリティ機能」の皮を被って戻ってきた**わけです🐺
🛠 サイト運営者として何ができるか
自社サイトの問い合わせフォームにreCAPTCHAを入れている方は、これを機に代替を検討すべきです。
代替の候補:
- 🍯 honeypot field(=人間には見えないけどbotには見える「罠」フィールドを置いて、入力されたらbot判定)
- ⏱ 入力時間判定(=フォーム表示から送信まで0.5秒なら明らかにbot)
- 🔄 Cloudflare Turnstile(=Cloudflareが提供するreCAPTCHA代替、無料)
reCAPTCHAは「無料」のように見えますが、実は**「ユーザーをGoogleの仕組みに縛りつけるコスト」**を間接的に払っているとも言えます💸
☁️ Cloudflareが20%リストラ — クラウド時代の足元
📰 Cloudflare to cut about 20% of its workforce(HN 1326pts)
Cloudflare(=Webサイトの配信・防御・データベースなどを提供する大手クラウド企業)が、従業員の約20%(1100人超)を解雇するというニュース。
私自身、このブログ(infohiroki.com)もお客さまのプロダクトもCloudflareでホスティングしているので、これは他人事じゃありません🌩
🤖 リストラの背景は「AI自動化」
詳細はまだあいまいですが、同じ週にCloudflareは「AIエージェントが自分でCloudflareアカウントを作って、ドメインを買って、デプロイまで完結できるようにする」という発表もしています。
AIエージェント(=人間の代わりに作業を進めるAIプログラム)が中心になり、人間のエンジニアの役割が再編されているサインだと読めます。
😰 何が怖いか
1社のクラウドサービスに本番環境を完全依存していると、こういう変化を被る側になります。
サポート品質の劣化、障害対応のスピード低下、サービス自体の方針転換(値上げ、機能停止、買収)—これらは利用者の都合とは無関係に起こります。
🛡 私のスタンス: 使うけどロックインはされない
「Cloudflareは積極的に使う、ただしいつでも他社に乗り換えられる設計で使う」
具体的には:
- 💾 D1のデータは定期的にSQL形式でダンプを取って、外付けSSDにバックアップ
- 🧰 Cloudflare Pages Functions(=Cloudflare上で動くサーバーサイドコード)の実装は、なるべくCloudflare独自機能を使わず、標準的なJavaScript APIで書く
- 🌐 重要なドメインのDNS情報は、別のDNSサービスにも同期しておく
100%ベンダー独立は不可能ですが、**「2社目への引っ越しに2週間かかるか、3ヶ月かかるか」**は、設計次第で大きく変わります🚚
🤡 AI slop がオンラインコミュニティを殺してる
📰 AI slop is killing online communities(HN 826pts)
Robin Moffatt氏(Confluentの開発者リレーション、長年のテックブロガー)の記事。
🥒 AI slop ってなに?
「slop」は英語で**「汚泥」「家畜のエサ」**みたいな意味。 AI slop = AIが量産した中身のないコンテンツを指すスラングです。 日本語にすると「AI生成のスカスカ文章」とか「AIコピペ」が近い感覚🤖💩
✏️ 比喩が秀逸
幼稚園から帰ってきた子どもがクレヨンの落書きを誇らしげに見せる。それは家の壁に貼っていい。だがそれより外には貼るな。
これがAI生成コンテンツに対する彼のスタンス。
あなたがプロンプトを入れてEnterを押した。おめでとう、誰も読みたがらないよ。
直球の物言い🥊
🚷 何が問題か
彼が問題視しているのは「AI生成そのもの」ではなくて、**「AIに書かせて、自分の貢献として垂れ流す行為」**です。
具体例:
- 📌 GitHubのIssue(=ソフトウェアのバグや要望を報告する場所)に、AIが書いた長文回答を検証なしで貼る人
- 💬 開発者コミュニティのチャットに、ChatGPTのコピペを「これ読んでみて」と投稿する人
- 📝 Stack Overflow(=プログラマーのQ&Aサイト)に、検証なしのAI回答を量産する人
🎯 「Built with AI, not by AI」
AIで作る (Built with AI) のと、AIに作らせる (Built by AI) は違う。
AIは校正・構成提案・ファクトチェックの相棒として使う、判断と文体は人間が持つ—これが彼の線引き。
🪞 自分にも刺さる
これは私にとっても刺さる話で、このブログもメルマガも「AIに丸投げした記事」だけは絶対に出さないようにしたい。
AIは便利な道具ですが、書き手の判断と文体は人間側に残す。これは技術論じゃなく、書き手としての倫理の話です✍️
🛠 自前メルマガを1日で作った話
ここがクライマックス(自分にとっての)。
今週、Cloudflare D1 + Cloudflare Email Routing + Resend + Cloudflare Pages Functionsの組み合わせで、自前のメールマガジン配信システムを丸1日で組みました。
📦 各サービスを噛み砕いて説明
- 💾 Cloudflare D1: Cloudflareが提供する軽量データベース(SQLite互換)。購読者の一覧をここに保存。月25M回まで無料
- 📥 Cloudflare Email Routing:
hello@infohiroki.com宛のメールを、自分のGmailに自動転送する仕組み。完全無料 - 📤 Resend: メール配信専用サービス。3000通/月まで無料。SMTPの面倒くささを避けて、HTTP APIで送信できる
- 🧠 Cloudflare Pages Functions: 静的なWebサイトに少しだけサーバー機能を足せる仕組み。/api/newsletter/subscribe のような API を実装した
⚙️ 実装した仕組み
| 機能 | 中身 |
|---|---|
| 📋 購読者DB | Cloudflare D1のnewsletter_subscribersテーブル(メールアドレス + 確認用token + 状態) |
| 📨 ダブルオプトイン | 「登録 → 確認メール送信 → クリックで本登録」の2段階(=他人が勝手に登録できないように) |
| 🔐 SPF/DKIMのDNS認証 | Resendからinfohiroki.comを「自分が送信するドメイン」として正規認証(=迷惑メール扱いされないため) |
| 🔁 ワンクリック配信停止 | 配信メール末尾の停止リンクを 1 回押すだけで配信が止まる(Gmail がこの方式を推奨) |
| 📜 配信スクリプト | ローカルでitems.json(配信内容)書いてnode send-newsletter.mjsで配信 |
💰 追加月額コスト: **0円**
既存のCloudflareとドメインに乗せたので、Resendの無料枠(3000通/月)の範囲では1円も払いません💸
購読者が200人を超えるか月3000通を超えると Resend Pro $20/月が必要になりますが、**それは「リストが育って商品売れ始めた頃」**の話なので、いい問題です🎉
🤔 なぜ自前で組んだか
理由は今週のニュースが教えてくれた話と完全に一致します:
- 🏠 購読者リストはあなたのドメイン上のデータベースにある — Substackや Mailchimp を退会しても、何の手続きも要らずにリストは手元にある
- 🔄 配信ベンダー(Resend)は付け替え可能 — Resendが障害を起こしても、値上げしても、サービス停止しても、SendGrid/AWS SES/Mailgunに数時間で乗り換えられる
- **📅 「気が向いた時にだけ届く、月1程度」**という運用ポリシーを、SaaSのテンプレートに合わせず自分で決められる
📮 名前: infoHiroki ぼちぼち便り
LP・購読フォームは infohiroki.com/letter です。もし読みたい方がいたら登録してみてください。
頻度プレッシャーは作りません。月1程度、書きたい時に書きたいことを送ります🐢
「ぼちぼち」というのは、無理をしないという意味でも、半端な完成度を許すという意味でも、いい言葉だと思っています。
🎯 まとめ: 他人のプラットフォームに依存しないとはどういうことか
今週見たニュースを並べると、答えはシンプル。
| ❌ やってはいけないこと | ✅ やるべきこと |
|---|---|
| 1社のブラウザ・OSだけを前提にWebを設計する | 複数ブラウザ・複数OSで動く実装を選ぶ |
| 1社のCAPTCHAだけに認証を委ねる | honeypot + 時間判定など、自前の判定を組み合わせる |
| 1社のSaaSに購読者リストや顧客データを置きっぱなし | 自分のDB(D1なり外付けSSDなり)にバックアップを持つ |
| AIに記事を書かせて流す | 自分で書いて、AIを校正・ファクトチェックの相棒にする |
| 1社のクラウドに全レイヤを依存させる | データの持ち出し手段(エクスポート)を確保し、付け替え可能性を維持 |
💯 100%プラットフォーム独立は無理
インターネット自体がプラットフォームの上に成り立っているし、私もCloudflareとResendとGmailに依存しています。
問題は「依存するか/しないか」ではなく、**「依存先が変わった時に、何時間で乗り換えられるか」**です⏱
その「乗り換え可能性」を確保するのが、🌐 自分のドメイン、💾 自分のデータベース、📝 自分のコードを持つということ。
今週はそれを、ニュースから学び、自分の手で実装した1週間でした🛠
📮 infoHiroki ぼちぼち便り — 月1程度の不定期メールマガジンを始めました。よかったら登録してみてください